セバスちゃんの
なまらの国から 2007 えっ?ログ
Still Alive 〜生きてこそ〜
春の羊蹄山。 山全体がガスに覆われていたので、真狩コースはあきらめ、1,000m以下の樹林帯でもバラエティに富んで楽しめるヒラフコースに変更した。 意外と快適なラッセルでハイクすること3時間。標高1,150m、ヒラフコースの森林限界に達し、これ以上登っても視界がないので目標物のある疎林帯を滑ることにした。 水分をたっぷり含んだ30cmの新雪は、ぼくらの予想に反してかなり滑りやすい絶好の雪質だった。途中から聞こえたワッフィング(雪中層の破壊される音)が気になったので、ピットチェックをしてみる。すると、30cmの新雪の下に、5cmの黄砂ザラメ層、そしてさらに5cmのザラメ層があった。この2つはともに結合が悪く、いつ雪崩れてもおかしくないコンディションだった。。。 ボクらは極力リスクを減らし、それぞれバックアップをとりながらの行動(滑降)に徹した。一人づつリスクの少ないなラインを滑り、安全圏でみんなを待つ。この作業を繰り返していたが、残りあと二人となったところで、故意ではないがもっとも危ないノール上を横切ってしまった。次の瞬間、山全体に響き渡る亀裂音とともに斜面が崩れはじめた。 安全圏にいると思っていた僕も流されている。 ブリッジングにより遥か上部で斜面が破断されたようだ。 湿雪表層特有の巨大ブロックごと沈まずゆっくり、といっても時速10〜15kmくらいで流されいく。もちろん逃げることも出来ず、足を下に向けながら迫り来る大木をかろうじてよけていくのが精一杯だ。 流されながら撮り続けたデジカメも、木に当った衝撃で手放してしまった。横の小さな木がバキバキ音を立ててへし折られていくのを見て、自分が木に挟まれた時の状況を容易に想像できた。 ボクはとにかく必死で木をかわし続けた。 最後は、へし曲がった小さな木に乗り上げて落ちたところで、頭を強打し流れは止まった。 数分の出来事だったが、とても長く感じた。 とりあえず体は動いたので、デブリの中から這い出てみんなの安全を確認した。標高差200m、幅50m、流された距離はおよそ300m。 湿雪雪崩とはいえ、かなりの規模の雪崩である。 このデブリを見て、無事だったことが不思議だった。 ボクは生かされているのだろうか? ガイドという仕事を続ける限り、常にギリギリの判断をしながら、リスクと楽しさが同居するこのような斜面にみんなを連れて行かなければならない。そして、ガイドはパーフェクトでなければならないのだ。それはお客さんを安全に連れて戻ってくることを意味する。もちろん自分も含めて。 この事態を真摯に受け止め、次に生かし伝えていくことが、生かされたボクの仕事なのだろうか。。。
15.April
こんな木の間を幾度となくすり抜け、最後は下の白樺に頭をヒットして流れは止まった
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